強い女性は美しいです
子どもの頃や学生時代にスポーツをされてきましたか?
それはどのようなスポーツですか?
小学生はキックベースボール、中学高校は剣道部に所属していました。
見た目が良い身体を作るためではなく重量を求めるトレーニングをすることで、どんな体型でも私らしくていいなと思うようになりました。
いつ、なぜ、そしてどのように(パワーリフティング、ウェイトリフティングなどの) ストレングススポーツを始めましたか?ストレングススポーツを始めたきっかけについて教えてください。
筋力トレーニングに最初に触れたのは高校の部活です。
その後、体育の教員免許とスポーツトレーナー関係の資格所得を目指し大学に進学し、スポーツジムでアルバイトを始めました。そのジムでトレーニングをしていた時に、お客様にパワーリフターの方がいて、ベンチプレス競技に誘われたのが最初のきっかけです。
何年ですか?
2011年19歳の時。
ウェイトリフティングを始めたきっかけは別にあります。
大学卒業を後、大学職員を経て女子柔道選手を中心としたトレーニングコーチとして働き始めました。選手のサポートをしていく中で、競技アスリートのトレーニングプログラムにはウェイトリフティングが必須であると感じていましたが、自分がウェイトリフティングのデモンストレーションできないのがコンプレックスでした。
そんな時に主人の知り合いであるウェイトリフターの平岡勇輝さんが代々木でジムをはじめたと聞き、通うようになったのがきっかけです。最初は仕事のためでしたが、今は自分が楽しくて続けています。
何年ですか?
2016年。
ストレングススポーツを始めてから、あなたの人生や生活において何が変わりましたか?ストレングススポーツによって、あなたの人生や生活はどのように変わりましたか?
たくさんの出会いがあったことによって人生は大きく変わったと思います。
主人とも世界ベンチプレス選手権大会で出会いましたし、普通に生活していたら出会わないような友人を作ることができ、世界の広さを知りました。
目標に向かって努力する人は総じて明るく、会うだけでパワーをもらうことができるような人間的にも素晴らしい人ばかりです。
そして今のアスリートのトレーニングを指導するという仕事にもついていなかったと思います。今の仕事は責任も大きい仕事ですが、ストレングススポーツがチャレンジする勇気と自信を与えてくれました。
もしよろしければ、パワーリフティングをしている人との結婚についてご意見を聞かせて下さい。
お互いトレーニングを生活の一部にしているので、その時間を共有でき、共感できることは幸せだなと思います。夫はパワーリフティングの経験豊富な選手なので尊敬できる人との結婚は自分をより成長させてくれるなと改めて感じました。
一緒にトレーニングするとよいアドバイスをもらうことができますが、家族だからこそまっすぐ意見を言われると素直に聞けないこともあります。
ストレングススポーツは、あなたの健康や人格、あるいはその他の人生の側面において、どのように影響しましたか?具体的なストーリーや例をお聞かせください。
人と比べるのではなく、自分が成長できているかに焦点を当てる。
自分に自信が持てるようになったこと。
見た目が良い身体を作るためではなく重量を求めるトレーニングをすることで、どんな体型でも私らしくていいなと思うようになりました。
好きな時に好きなものを食べ、好きにトレーニングする。
人と比べるのではなく、自分が成長できているかに焦点を当てる。
こうした考え方がストレングススポーツを行っていく中でできるようになり、ストレスなく、心も身体も健康に過ごせるようになったと思います。
あなたの標準的な一週間の過ごし方はどのようですか?トレーニングのスケジュールや内容、食事、その他の取り組みを含めてお答えください。
平日仕事のスケジュールに余裕がある時はBlackShipsの早朝のクラスに参加してから仕事に向かいます。最近は行けていませんが、朝トレーニングをすると1日を気持ちよく過ごせるのでできる限り行くようにしています。週2回ウェイトリフティングのクラス中心に参加し、他週2~3回ほど自主練習をしています。自主練習はパワーリフティングのトレーニング中心です。
食事は試合がなければタンパク質は確保したうえで後はある程度好きなものを食べます。食事に細かく気を使うことがないのはストレングススポーツの一つのメリットかなと思います。
その他、睡眠時間を7時間は確保できるようスケジュールを組むようにしています。最高のパフォーマンスは運動・栄養・休養の三本の柱が重要だと思うので、しっかり休むことも意識しています。
これまでのストレングススポーツの経験の中で、あなたが最も誇らしく思った瞬間はなんですか?理由と共に、ストーリーをお聞かせください。
2019年1月に行われたジャパンクラシックパワーリフティング選手権大会で優勝した時です。日本記録も残すことができました。
それまで、ベンチプレスの大会には出場していましたがスクワット、デッドリフトを加えた3種の大会に出場するのは初めてでした。いつかクラシックパワーで優勝したいという思いはありましたが、仕事のスケジュール等で出場機会がなく、やっと出られた大会でした。
試合で記録を残す、というのは普段のトレーニングで自己ベストを出すのとは全然違います。試合までにピークをもってきて、減量して、リカバリーして…と様々な要因が関わってきます。実際にベストの状態には持って行けなかったのですが、そんな中でも記録を残せたことは大きな自信になりました。
筋力トレーニング以外にしていることはありますか?(仕事や趣味など)
漫画を読むことは昔から好きで時間があれば色々なジャンルの漫画を読みます。トレーニングの時間も何も考えずに没頭できるので好きですが、漫画を読んでいる時間も同じような気持ちになれます。
それから、ピカチュウが大好きでその存在にいつも癒されているのですが、子どもっぽい趣味でも「好きなものは好き」と胸を張って言えることはストレングススポーツで培った自信の賜物かもしれません。
トレーニングにおいて挫折、怪我、葛藤、ジレンマ、失敗はありましたか?どのようにそれを乗り越えましたか?
ボディメイクにチャレンジした時にちょうど転職時期と重なり色々なストレスから摂食障害のような症状になったことはあります。ボディメイクのために食事制限を頑張って行い、解放されたあとの過食で最低体重から10 kg くらい増えました。人間関係にも悩み、結構落ち込んでいましたが、その時ベンチプレスの記録がグッと伸びて PB 100 ㎏ を超えるようになったんです。
結果的に体重が増えることも悪いことではないなと思えたし、急激に太ってしまった私に対しても主人が「体が大きくなっても大丈夫だよ、かわいいよ」と言ってくれたことは今の私でもいいんだと前向きにとらえることができ、とても安心したのを覚えています。その後、三種のパワーリフティングやウェイトリフティング、クロスフィットをコツコツ続けるうちに身体は締まってきましたが、今でもあの時の最低体重より10 kg くらい重たいです。でも、今の自分の身体は気に入っています。
後は本当に些細な事ですが、パワーリフティングの練習をやるのかウェイトリフティングの練習をやるのかという問題。これはどっちも好きなので、今でも選べないですが、両方相乗効果で伸びてくればいいなと思っています。
若いころの自分、もしくは一般的な若い女性や女の子へのメッセージは何ですか?
ぜひ若いうちにいろいろなことにチャレンジしてたくさんのものを自分に残してほしいと思います。
私の考えですが、若い女性は「若い」という絶対的な魅力があります。今は SNS の時代ですから素敵な写真を残して「いいね」をもらったり、いい身体になるためや記録を残そうと努力をしたりと自分に自信を持つことは積極的に行うべきだと思います。そしていざ「若い」という付加価値が消えた時何もない状態にならないよう、知識やスキル・経験を持っておくべきです。
私の周りにはトレーニングをライフスタイルにしている素敵な30代、40代、50代以上の女性がたくさんいます。私もそういう女性になりたいなと思い、20代も終わりに差し掛かり自分に何が残るのかすごく考えました。大学時代に取った資格やパワーやウェイトリフティングの記録は形として残るし、トレーニングをしている中で培った経験や人間関係も私の作る一部になる。
ぜひ若いうちにいろいろなことにチャレンジしてたくさんのものを自分に残してほしいと思います。
筋力トレーニングを始めたいけれどどこから始めたらよいかわからない女の子/女性にどのようなアドバイスをしますか?
大切なのは継続することだと思うので、継続するための理由をつくることをまず行うべきかと思います。なんとなく始めてやめていってしまう女の子はたくさん見てきました。
理由はなんでもいいです。健康になりたい、痩せたい、キレイになりたい…色々あります。でもそれもなんとなくそうなったらいいな、では不十分。絶対的な意思を持って行動できる理由でなければいけません。
私のおすすめは「楽しいから」という理由をつくること。なぜかというと私がそうだから。トレーニングを始めた大学時代に、先生や先輩、友達に囲まれて狭いトレーニングルームで騒ぎながらやっていたトレーニングの時間が大好きでした。そのトレーニングの楽しさが私のトレーニングの根底に残っています。だからこそ誰かとやるトレーニングが楽しいし、頑張れる。
トレーニング好きは素敵な人ばかりなのでその人に会いたくなる。今のコロナ渦の状況的に難しいことも多いですが、ぜひ「トレーニングは楽しい!」と思える環境を作ってください。 ジムに行くのであれば素敵な人と出会えるようなジムに行ってみるといいかと思います。好きでなければ続かない。トレーニングを好きになってください。
ストレングススポーツの経験の中で、誰の影響を受けましたか?ロールモデルとなる人はいますか?
かっこよくてかわいい女子柔道選手達です。私は仕事で女子柔道選手に関わらせてもらっていますが、みんな性格がよく素敵な女の子ばかり。
彼女たちが私に強い女性は美しい、ということを教えてくれました。
目標に向かって稽古・トレーニングに励む彼女たちをサポートしていると私も彼女たちのように強い女性でありたいと自然と思うようになりました。そしてみんなトレーニングしなくてもフィジカルはとても強く、ウェイトは私の方が持ちあげることができても生き物として勝てる気はまったくしません(笑)。この選手たちにトレーニングを教えるのであれば自分が選手たちにリスペクトしてもらえるようになりたいと思ったのもストレングススポーツを頑張ろうと思った一つの要因かもしれません。
もう一人、トレーニングの楽しさを最初に教えてくれた女性は Shieca さんというフィットネストレーナーの方です。こういう女性になれるんだったらトレーニングをしたいなと思わせてくれる身体も心も本当に素敵な方。ボディメイク中心のトレーニングでしたが Shieca さんにトレーニングの基礎を教えてもらったことは私の原点です。
彼女たちが私に強い女性は美しい、ということを教えてくれました。
ストレングススポーツや人生における将来的なプランはありますか?
パワーリフティングやウェイトリフティングは生涯スポーツだと思うのでおばあちゃんになるまで続けていきたいです。
まだ一緒に住んでいない夫との生活も今後楽しみたいし、子どもも欲しい。年齢を重ねて妊娠・出産を経て記録は落ちるかもしれないしもしかしたら伸びるかもしれない。そういった変化もストレングススポーツを続けていたら発見できるだろうし、強くなろうともがいていく作業がきっと苦しくもあり、楽しいんだろうなと思います。
そして今の仕事がひと段落したら、一般人からアスリートまで強くなりたい女性に対して何かできたらいいなと思っています。
これまでの質問以外に、あなたがぜひ話したい、話すべきだと思うお話はありますか?
この質問を私に与えてくれた Alex、本当にありがとう。私にとってトレーニングとは何なのかもう一度考えることができ、原点に戻ることができました。ウェイトリフティング、クロスフィットという競技を通してあなたに出会えたことは私の財産です。
そして、今一人で頑張ってトレーニングをしているような方がいるのであれば、トレーニングを通して素敵な友人を作ってほしいと思います。なぜならば、こうして人との出会いを与え、人生を豊かにしてくれるのがストレングススポーツをはじめとしたトレーニングの魅力の一つだからです。